君と奏でるノクターン
1章/アマデウス in ウィーン

1話/ ROSE

――ゴメン、返信できない

詩月は着信メールを確認し、スマホをOFFにする。

緒方郁子からのメール。

詩月は嬉しいはずなのに……何件かに1件しか、返信できないでいる。

留学先の異国での生活。

詩月は言葉に不自由している訳ではない。
生活に困っている訳でもない。

でも、何故か気持ちがモヤモヤしている。


オーストリアは父の演奏活動の拠点。
詩月の頭に、超絶技工演奏家、天才ピアニストとして名高い父「周桜宗月」の影がちらつく。


ピアノを弾いてもヴァイオリンを弾いても、満足のいく演奏ができないでいる。


街がクリスマスの装いに華やぎ、そこかしこで音楽が奏でられている。


木枯らしが吹き、雪のちらつく街。



Nフィルで指揮棒を振っていたマイスター、ジョルジュ。
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