君と奏でるノクターン
安坂貢はからかうように言う。


「意地悪」


郁子はむくれて、珈琲を啜る。


「そうだ! あの『ヴァイオリンロマンス』の曲、CD化するんだ」


「凄い!!」


「周桜がおこした楽譜だからな、あいつのソロ演奏も入れてね」


「周桜くんは知ってるの?」


「学長が連絡入れて、ソロ演奏の音源をこちらに送ってるはずだけど……あいつに訊ねてみたら?」


貢は微かに口角を上げ、穏やかに言う。



私立聖諒学園に伝わるヴァイオリンロマンス。

正門のヴァイオリンを弾く女神像と、裏門の竪琴を弾く男神像――。

幾つかの条件を全てクリアし、得られる旋律は、音楽の祝福と恋を叶えると言われている。


留学の数ヶ月前。
詩月は条件を全てクリアし、ヴァイオリンロマンスの旋律を聴き、それを楽譜におこした。

< 21 / 249 >

この作品をシェア

pagetop