君と奏でるノクターン
理久は大画面を見つめ、耳を澄ませて、口に加えた煙草を落としそうになり、慌てて指で掴む。


「――この曲、ファックスしたの2日前だぜ」


「えっ!? 2日前で……この完成度」

詩月は視線を、ピアノを弾く宗月たちに向け、ゆっくりと息を吐き出す。


「さすがプロだよな、プレッシャーだな」

理久は意地悪そうに言いながら、どこか愉しそうにしている。

「自分で興した楽譜でプレッシャーなんて、そんなに繊細ではないよ」

詩月は澄まし顔、強気でこたえる。


「言うね~。こちらも賑わってきた。そっちはだいぶん、出来上がった客が多そうだな」


「ジョッキワインを浴びるほど流しこんでるんだ……信じられない」

理久の後ろでマスターが、自慢の喉を鳴らし、軟かに歌っている。

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