ROSE         ウィーン×横浜
郁子がスマホをしまおうとバックを開けた時、着信音が響く。

着信音はシンプルな固定電話の音。


画面に映し出された着信主の名前に、慌ててスマホを操作する。


「もしもし……周桜くん?」


逸る気持ちに、声が上ずる。


――Bitte?


見知らぬ男性の声と言葉。


「えっ……ドイツ語? 誰、周桜くんではないの?」


――Michael Ich tue?
Dass Sie nicht egoistisch sein.


電話の向こう、聞き覚えのある声が聞こえる。


慌てているような口調だが、ドイツ語で何を言っているのか、郁子にはわからない。


――wieder ・ber und sorry nochmals.
Mit einem Freund Was m・chte ich in Verbindung setzen

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