ROSE         ウィーン×横浜
コートのポケットで、スマホがバイブし、着信音が小さく鳴る。


――ミヒャエル……お節介

幾つかの駅を過ぎ、電車を降り改札口を抜け駅舎を出る。

雪が舞っている。
ミヒャエルと話した時よりも強く。


詩月は鞄の中から、折り畳み傘を取り出す。
傘を差そうとすると、駅前で見知った顔の女性が車を止め、大きく手を振りながら叫んでいるのが見えて、手を止める。


――マルグリット


詩月は手を上げ、数回振って合図する。


傘を差し、車まで歩く。
ゆっくりと……気持ち急ぎながら。


「急がなくていいわ」


よく通るソプラノ、マルグリットの声が響く。


マルグリットの頭に肩に、雪が積もる。
詩月は、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


積もった雪が、踏みしめるたびミシミシと泣くのに合わせ、胸に微かな痛みが走る。

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