君と奏でるノクターン
音もなく舞う雪の白さ、足跡のついていない雪の庭。

庭に植えられた、名も知らない木の枝に積もる雪と降る雪が、白い花のようで、暫し目を止める。

街灯の灯りが点滅し、明るくなったり暗くなったりしている。

横浜にある詩月の家からは、窓越しに横浜の夜景が見えた。

高台から見下ろす景色の先には遠く、漆黒の海にライトアップされた船影も確認できた。

カーテンを閉め、電灯を消す。

枕元の仄かな灯りだけが光る。

詩月は翌日の予定をスマホで確認し、ベッドに入る。


――ん!?

足を入れて、違和感を感じ蒲団の中をそっと見る。

丸々としたふわふわの塊が蹲っている。

目を凝らし、頭を入れ、腕を伸ばし塊を引き寄せる。


――温かい

抱きかかえた腕の中に、すっぽり収まる温もりに心が和む。


「どうした?部屋を間違えたのか」


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