シンデレラの落とし物
イタリアの女性たちを追い払った美雪に笑いかける秋。美雪は信じられない思いで秋を見上げその場に立ち尽くした。

うそ、でしょ!?
大野秋、くん?

「さっきの……」

いいけかけて言葉を探す。

「サン・ピエトロ大聖堂でどついてきたよね」

「そっそれは……」

あなたに気をとられていて、ヒールが刺さったことに気付きませんでした、なんていえない。

「あなたは大野秋、くん?」

頷く秋に、美雪はやっぱり本物だったんだと嬉しい驚きを感じて浮き足立つ。

「君は?」

「わたしは高原美雪です」

小さく頭を下げておじぎをする。

「美雪ちゃんか」

確認するように名前を呼ばれて、嬉しさのあまり体が飛んでいきそうだ。

「で、今のは……?」

誰もいなくなった辺りを見渡し、秋が問う。
夢見心地になっていた美雪もそこで現実に戻る。
浮わついている場合じゃなかった。
危うく秋くんは、とんでもないトラブルに合うところだったのだ。
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