シンデレラの落とし物
「………」
「………」
重い沈黙が部屋の中に漂い、口を閉ざした美雪が大きく息をはいた。
張りつめていた緊張が切れて、溜まっていた疲れが一気に出たような気分。
ここまできたらもう隠す必要もない。
「主人はもう……この世にはいないの」
うつむいてポツリという。
「……ごめん。余計な一言だった」
申し訳なさそうに謝る秋。美雪は黙ったまま謝罪を受け入れた。
気まずい沈黙がふたりを包む。
「よし! ホテルのお洒落なレストランもいいけどさ、バールに行って美味しいワインでも飲もうぜっ」
秋は握り締めた拳に反対の手のひらを打ち付けて、憂鬱な空気を追い払うように、にっと笑った。その笑顔につられるように美雪が顔を上げる。
そんな顔するなんてズルい。
テレビ越しではない、その笑顔に美雪の心はざわついて落ち着きをなくした。
ふたりはホテルを出ると、まずサンマルコ広場へ向かった。海上では大勢の客を乗せた水上バスが走り、河岸に止まっている何隻ものゴンドラでは、ボーダーのTシャツを着たゴンドリーエが観光客を待っていた。
「………」
重い沈黙が部屋の中に漂い、口を閉ざした美雪が大きく息をはいた。
張りつめていた緊張が切れて、溜まっていた疲れが一気に出たような気分。
ここまできたらもう隠す必要もない。
「主人はもう……この世にはいないの」
うつむいてポツリという。
「……ごめん。余計な一言だった」
申し訳なさそうに謝る秋。美雪は黙ったまま謝罪を受け入れた。
気まずい沈黙がふたりを包む。
「よし! ホテルのお洒落なレストランもいいけどさ、バールに行って美味しいワインでも飲もうぜっ」
秋は握り締めた拳に反対の手のひらを打ち付けて、憂鬱な空気を追い払うように、にっと笑った。その笑顔につられるように美雪が顔を上げる。
そんな顔するなんてズルい。
テレビ越しではない、その笑顔に美雪の心はざわついて落ち着きをなくした。
ふたりはホテルを出ると、まずサンマルコ広場へ向かった。海上では大勢の客を乗せた水上バスが走り、河岸に止まっている何隻ものゴンドラでは、ボーダーのTシャツを着たゴンドリーエが観光客を待っていた。