それは薔薇の魔法
気づいた心




「はっ、はっ……」



体が熱い……呼吸が、苦しい。


真っ暗な世界に、わたし、ただ一人。



「ぉ、か…さ……と、さん……」



寂しくて、不安でたまらない。


思わず父と母を呼ぶけれど、我に返れば二人はもういないということに気づく。



「ひとり、は……いや………、」



夢の中なのか、現実なのか。


分からないけれどこぼれてしまった、わたしの心。


ひんやりとしたものが、わたしの頬に当たる。


それは優しく頭を撫でてくれて。



朦朧とした意識の中で、誰かに

「大丈夫だよ、」

と言われた気がした。












――――――――――――――――――
――――




ふと目を覚ますと、見慣れない天井がそこにはあった。


ぼんやりとする頭で周りを見渡せば、明らかにわたしには場違いなところで。



「……ぇ、」



サア、と血の気が引いた。



ここ、わたしの部屋じゃない……!?


慌てて起き上がるとズキッと痛む頭。



でも、そんなことも言ってられないわ。


こんなところにわたしなんかがいたら大問題になってしまう。


アレン様とシェイリー様に、迷惑をかけてしまう……


まだ頭はクラクラして頭痛もあるけれど、多分大丈夫。


と、思ったけれど。


ベッドから降りて立った途端世界が回って。



「、ぅ…………」



一歩を踏み出した弾みで倒れてしまう。



わたし、かなり弱っているのね。


これが無理をした代償なのかしら……


だとしたらもうこんなことが起きないように注意しなければ。







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