それは薔薇の魔法




倒れる!と反射的に目を閉じるけれど、予想外の温もりに包まれて。



「え……?」


「全く…ローズ、貴女は無茶をしすぎだ」



はぁ、と耳元をくすぐる声に心臓が跳ねる。


そして体を包む体温に顔の熱が急に上昇した。



「あ、の……」


「静かに」



え、と思ったらふわりと体が浮いて足が地面から離れる。



「きゃ……っ」



慌ててシリル様の服を掴むとクスリ、と笑う気配がした。



こ、これっていわゆるお姫さま抱っ……


自分には無縁だと思っていたことをされて、カアッとなってしまう。


どぎまぎしているわたしとは対照的にシリル様はいつも通りで。


わたしを抱いたままベッドに近づき、わたしをベッドの上に下ろした。



「あの……?」


「父上も母上もローズのことは知っている」


「え……」



わたしは驚きで目を見張る。


それと同時に申し訳ない気持ちも湧いてきて。



「今は、余計なことは気にしないでいい」


「シリル、様?」



ふわり、と頬にシリル様の手が触れた。



「父上も母上も、ローズの体を心配していた。
今は体を休め、体調がよくなったら二人に顔を見せに行ってあげてくれないか」



少し困ったような笑みを浮かべてわたしを見るシリル様。


そんな顔をされてしまったら、わたしは頷くことしかできない。



「まだ体は本調子ではないだろう?横になって」


「はい……」



自分の部屋のとは全く違う柔らかなベッドに体を沈める。



「今何か食べ物を持ってくる。そこでおとなしく寝て待っていて」



わたしが頷きを返すと、シリル様は微笑みを浮かべ、扉の向こうに消えた。






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