君色-それぞれの翼-
荷物を肩にかけ、心の中で部屋に別れを告げた後、あたしは郁那と南と一緒に外に停車していたバスに乗り込んだ。
当然バスの中は、行きのバスより騒がしかった。
雪はあれから目立つ子達が集まった様なグループに入ったらしい。
愛美のことは分からず終い。
でも、もう気になったりはしない。
友達を沢山作りたいわけでも無い。
郁那と南。一緒にいて楽しいこの二人がいるだけで充分心強かった。
昨日沢山寝たからだろうか、眠たくなったりはせず、学校までの約1時間、3人はずっと喋り続けた。


**********


「じゃ、ばいばい!!」
学校に着くと、遠くから通学している生徒達の迎えの車でグラウンドが一杯だった。
郁那や南も手を振りながら、迎えに来た親の元に走って行った。
扨。あたしは周囲の人達とは違う方向に走る。

(あ、先越された。)

着いた先はバス乗り場。既に扉が開いているバスには人影があった。
カンカンと音をたてながら、バスの階段を上がる。

「どーも。」
あたしは先客――戸谷君の後ろの席に腰を下ろした。
戸谷君はチラリとこちらを見ると、「どーも」と返してくれた。
迎えの車が殆ど見えなくなった頃、バスは発車した。

「ねぇ、戸谷君…」
そういえば今日は日曜日。生徒はもちろんいないし、人が乗ってくる気配も無い。
聞き辛い事を聞くには絶好のチャンスだった。
戸谷君は「何?」と言う様に、首を少し傾ける。
「…大切な子には…会えた…?」
あたしが聞くと、戸谷君は首を真っ直ぐに戻した。
「会えたよ…。」
そう言って視線を窓の向こうにやる。同時に、心がズキっと痛んだ。
しかし、嬉しそうな顔をしない戸谷君に対して、疑問が溢れる。
「それって…松井さん…?」
戸谷君は反応しなかった。
視線はずっと窓の向こう。
あたしはだんだん不安になってきた。
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