君色-それぞれの翼-

「松井さんは、俺の事どうでも良いと思う。」
しばらくして、戸谷君は落ち着き払った口調で言った。
途端に胸が軽くなる。
安心して溜め息が漏れる。
理解し辛い言い方だが、無関係だととって良い筈だ。
じゃぁ誰?
そう思ったけど、今はとりあえず良い。
「ふーん…。」
心の中とは裏腹に、興味の無さそうな返事を返す。
本当は心のつっかえが取れた感じでホッとしているのに。

背凭れに凭れると、ギッと鈍い音がなった。
戸谷君はその音に従う様に、視線を前に戻した。



そしてあたしたちは、静かなまま、眠りにつく。
目を覚ましたのは、自分が降りるバス停のすぐ手前。
戸谷君はもう少し先の終点なので、起こさなくても良いだろう。


「ばいばい」
少し疲れが出ている表情で眠る戸谷君に手を振り、あたしはバスを降りた。


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