予想外の恋愛
こっそり二人の様子を伺う。
テーブルに向かい合って座っている二人は、幸せそうに話している。
初々しさが伝わってきてこっちまで甘酸っぱい気分になる。
私にもあんな頃があったなあと思い、高校生の頃を思い出した。
今までの彼氏のことを思い出そうとすると、決まって一番最初に近藤くんが出てくるのだ。
その理由は多分、一番好きだった人だから。そして、一番辛い恋だったから。
思い出すのは、なにも幸せな思い出ばかりではない。
目の前の二人には、ずっと幸せでいて欲しいと、ただただ思った。
「…ナギサちゃん」
「は、はい!」
「ナギサちゃんってさ、たまにそんな風に物思いに耽るよね。なんか悩みでもある?」
店長にそう言われ、自分にはなにか悩みがあるだろうかと考えた。
「えっと、そんなことないです。すみません、ぼーっとしてて」
「いや、仕事はきっちりやってくれてるからいいんだけどね。ただ、たまに何考えてるかわからない顔してる時があるから」
「…多分、何も考えてないだけですよ。今はただ、あの二人の初々しさが羨ましかっただけです」
「そうなの?過去に辛い恋愛でも経験したの?」
「…まさか、ないですよ」
まだ何か言いたげな店長に気付かないフリをして、その場を離れた。