雪系男子のゆうちゃん


と、色々と言いたいことはあるが、今は口をつぐんでおこう。


「じゃ、綾瀬くん、狭義で好きになってもらえるように、がんばります!」


意味のわからないことを言いながら、大野さんがニコニコ笑う。

初めあった時の緊張はどこへ行ったのやら、随分楽しそうである。

じゃあねぇと、大野さんは友達のもとへ駆け寄って行った。



はぁ。


俺はまたため息をつく。


てか、何をこんな憂鬱になっている、俺。

そもそも、あやちゃんが俺を好きでも、別に一向に構わないはずなのだ。


同じように、『ありがとう、ごめん』でいい。

幼稚園の時に仲よかった女の子も蓋を開けてみれば、全員俺のとこが好きだったし


小学校の時に親切にしてくれたお姉さんも蓋を開けてみれば、俺のことが好きだったし、


中学校の時からもはや静かに教室で過ごすことなど一瞬も許されなかったし、
綺麗な新米の担任は、蓋を開けてみれば俺が好きだった。



つまり、ただ、そのような感じで、蓋を開けてみれば、

あやちゃんも俺を好きだったのだ。

それだけのことだ。


それを俺がこんなに憂鬱なのは、あやちゃんへの返事が…

『ありがとう、ごめん』でなくてもいい気がするからだ。


いや、だからといって、適切な文句は思いつかないのだが。




「………」



俺は、何度目かわからないため息をつきながら目を擦って、

自分の教室へ向かった。



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