契りのかたに君を想ふ
代償
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絵美が眠りについてから半年。
年も明けて世は大きく変わった。
天皇が亡くなられ、一橋慶喜公が徳川の名字を拝命し将軍となった。
絵美が眠ってからというもの新撰組の士気はすっかり下がってしまっていた。
非番の幹部が毎日交代で絵美を看る日々。
絵美がいつ目を覚ましても誰かが側にいてくれた方が安心するだろうという土方の配慮だった。
今日の非番は藤堂。
藤堂「絵美…目ぇ覚ませよ。お前がいないとつまんねえよ」
思わず一粒涙を絵美の白く細い腕に零してしまった。
隊長が泣くなんてな、と自嘲気味に笑うと絵美の手が微かに動いた。
藤堂「?!絵美!分かるか?起きろ!!」
絵美の耳元で彼女を呼ぶと長いこと伏せていた長い睫毛をあげた。
すると廊下からドタドタと大きな足音が複数聞こえた。
スパンッ
幹部「目覚めたか!!!!」
ワラワラとみんなで絵美を囲むと目を開けた絵美を見てみんな安堵の笑みを浮かべた。
土方「起きんのが遅えんだよ馬鹿野郎」
永倉「すげえ心配したんだぞ」
近藤「良かった良かった!!本当に良かった!!!」
沖田「もともと朝は弱い絵美でしたが流石に遅すぎますよ!!」
みんながいつものように口々に彼女に話しかけるがどうも絵美の様子がおかしい。
目を覚ましてからというもの俺たちをキョロキョロと見ては口をパクパクと開けている。
最初にその異変に気付いたのは原田だった。
原田「おい…絵美、俺らの事が分かるよな…?」
原田の問いかけにみんな何を言っているのだというように訝しげに見ていたが絵美の口から出た言葉は新たに幹部たちを悩ませる冗談にしては厳しいものだった。
絵美「…すいません、分かりません」