クールな彼の溺愛注意報




「絶対あいつ、紫乃に気があるよな」


「なっ、えええっ!? なななんでそう思うのでしょうか!?」


「……もう告られてるのかよ」




いやいやいや、なんでわかる!?


目を見開いたあたしに、葵衣は「わかりやすすぎ」と苦笑するように目を細めた。



た、たしかにあたし、嘘つくのは下手だけど……

そこまでわかるもの!?



おどろいていると、あたしの右手を引いて歩き出す葵衣。


案の定、周囲がまたさわぎはじめる。




「はやく出よ。まわりがうるさい」




あちこちで上がる悲鳴や冷やかしに、葵衣が迷惑そうにつぶやいた。


じ、自分が原因なのに……。



でも、さっきの安達くんへの対応を思い出して、心があたたかくなった。



さっき、葵衣が安達くんに『さんきゅ』って言ったとき。



すごく、うれしかった。


彼女として、ほこらしい気持ちになったっていうか……。



また、惚れ直したっていうか。



あたしは気づかれないように小さく笑って、葵衣の手をにぎり返した。





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