クールな彼の溺愛注意報




「ふーん……」


「だからいま、お礼言ってたところだったの。安達くん、ごめんね」


「いや、あやまらなくていいよ。じゃあまた……」




そそくさと退去しようとする安達くんに、申し訳なくなる。



葵衣、ずっと無表情だから怖いんだよ。

あとまわりの生徒たちの視線も!



心の中でごめんなさいともう一度あやまったとき、

なぜか葵衣が「おい」と安達くんを呼び止めた。



肩をびくっとゆらして、安達くんがこちらを振り返る。


なにを言うんだろうとひやひやして、あたしも葵衣を見上げた。




「……さんきゅ」




けれど葵衣は予想に反し、安達くんに優しい声でそう言った。


笑顔とまではいかないけど、おだやかな表情で。



安達くんはそれに数秒ほど見とれて。

思い出したように顔を真っ赤にして、頭を下げたあと、廊下を走っていった。



な……

なんだいまのは……。



 
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