ツンデレ君の虜。【完】
そうして翌日。



私は一日ぶりに電車に乗った。



一日乗ってなかったってだけなのに…こんなにもなつかしいとは。




そんなどうでもいいことを思っていた。



…が。



「うわぁっ…!!」



私は電車の揺れでバランスを崩してしまった。



今までこんなことなかったのに…



一日ぶりのせいかなぜか足元がふらつくのだ。



電車って一日乗らないとこうなるの…?!



電車に恐ろしさを感じた。




そしてなんとか体勢を立て直したものの、次の揺れでまたバランスを崩す。



何度もそうくり返していると。



「お前さ…やっぱバカ?」



そう聞こえてくる…声。



その声も、私は一日ぶりに聞いた。



「岬…!」



私が人混みから岬を見つけると彼はすわっていた座席から立ち上がった。



そしてその座席を私を見て指差す。



…すわれってこと?



私はお言葉に甘えてゆずってくれた座席にすわった。



岬はつり革につかまって私の目の前に立った。



足が休まっていくのがわかった。



「ありがとう…」



「別に。ふらつくお前が目障りだっただけ。」



そうそっぽを向いて言う岬。



なんか岬ってお礼を言うとすぐ私から目をそらすよな…



そうふと思う私。



もしかしてお礼を言われるのに慣れてない??



そんな考えにたどり着き、そんな人間いないかと思い首をふった。



「なぁ。お前って…なんでそんなに素直なんだよ?」



といきなり聞いてくる岬。



「え…素直?私が??」



「ああ。少なくとも俺よりは素直。」



「それはそうだけど。」



ていうか岬ほど素直じゃない人いないと思う…うん。



「どうやったら素直になれんだよ?」



「え、うーん…何事も信じれば素直になれるんじゃない?」



「…は?」



「と、とにかく人とかを疑わないことだよ!素直になんでも受け入れるの!」



最後の方は自分でも何言ってるかわかんなくなったけど。



「信じる…?疑わない…?」



岬は直球に私の言葉を受け取ったようだった。
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