《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「いったん!」
一子は、それを聞いてすぐに「いったんもめん」という白い布の妖怪を思い浮かべてしまった。
「いったん……ですか?」
「可愛いよねー。イッタン」
「可愛いかなぁ……」
お好み焼きの表面にマヨネーズをきれいな編み目模様にしてつけてくれた歩は、すごく満足気だ。
だから、何も言えなくなっていた。
「さ、イッタン。食べな!」
お好み焼きを取り分けてくれる歩は、一子をイッタンと呼ぶことに決めてしまったらしかった。
イッタンとは、「いったんもめん」だけでなく、「一旦」という意味にも聞こえてくる。
「イッタン、食べなよ」
「イッタン、飲みなよ」
「イッタン、時間平気?」
「イッタン、可愛いなぁ〜」
どんな言葉を言われても複雑な気持ちにしかならなかった。
ーーーなぜ、イッタンなんだろ……。
お好み焼きにぱくつきながら一子は、どうしたらいいのか良くわからなくなっていた。