続*時を止めるキスを —Love is...—


ツテって言葉が実はこんなに恐ろしいのか、と今初めて知らされた気分だ。

脱力した私たちをよそに、円佳はアピタイザーをつまみながら話し始める。


「SJ社にはね、エリートって呼ばれるイケメン役員がいるの。知ってるよね?結構有名だしね。
実物ね、ほんっと格好良いわよ!ダークグレイの瞳の色をしてて、足も長くて見蕩れちゃうし。
でも最近、社内の超美人と結婚して、超・愛妻家みたいだし、あくまで観賞用なんだけど。
その方と同期ですよね?彼氏さんも人事の部長の椅子が近いって噂ですけど……?」


「うーわー、どこまで知ってんの……」

弾んだ声での力説に負けたように、目の前に突っ伏した柚さん。向かいの席で見守る私は不憫さに、つい手を合わせたくなる。

「あ、あの!SJ社に勤務されてる時点でエリートですよね」

そこで空気を変えようと柚さんに話しかける。そもそも外資の有名企業において、着実に出世している時点でやり手だ。


「えー、普段はだらしないわよ。あの性格だし、人事が肌に合ってたんじゃない?
ま、人それぞれってことね。——そのうち、みんなの彼氏も混ぜて飲もうよ?」


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