君だけに、そっとI love you.



──診察室を出て、ずっと待っていた母親と顔を合わせた。






最初は心配をしているような表情だった私の母親、次第に両手で口元をしっかりと押さえて小刻みに肩を震わせ、笑うのを必死にこらえているようだった。






鼻の付け根に白いガーゼ、そして少し斜めにずれた眼鏡……。






いっそのこと、気持ち良く笑ってくれた方が私も清々しいのだか、そんなことを言う私もまだ自分の顔をはっきりと鏡で見ていない。





しかも、東先生が曰く私の前髪は通気性を悪くしているとのことで、看護婦さんがクスクスと笑いながら前髪を七三(しちさん)に分けてヘアピンで止めてくれた。






そのお陰で、長い間薄暗かった私の視界が広がり、そして周りの景色が光輝いて見えるようになった。






しかし、私の母親が笑いたくなるぐらいなのだから、私の顔は今きっとへんてこりんな顔になっているに違いない。







──すると、突然、その時母親のスマホが鳴る音がした。


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