君だけに、そっとI love you.
本当に、山頂に着いたんだ──。
午前5時27分、富士山の山頂に到着。
間もなく、眩しすぎる御来光が私達を歓迎してくれるかのようにゆっくりと昇りだした。
山頂到着でサッカー部のメンバー達や周りにいる人達の歓声が次々に聞こえる。
今まで諦めずに良かったと掬惠の瞳から思わず涙がポロポロとこぼれ落ちた。
私が前に出した一歩一歩は、確実に前に進んでいなさそうで進んでいたんだとその瞬間、その時、凄く実感をした。
嬉しすぎる気持ちが爆発してしまいそうで、そんな気持ちを側にいる誰かと分かち合いたくて。
その時、女子だからとか男子だからという余計な気持ちは一切なくて。
私は、気づいたら、坂口くんに抱きついていた。
思わず掬惠の体をそっと優しく抱き締める周翼。
「吉井さん、よく頑張ったね……」
「うん、坂口くんも……」
周翼は山頂から見えるパノラマの景色をずっと眺めながら考えていた。
大袈裟かもしれないけれど、生きていると実感ができた。
そして、吉井さんがもしもまだ今西島先輩のことが好きだったとしても、この瞬間だけは吉井さんを俺だけの物にしたいと思った。