君だけに、そっとI love you.
ひとけがなく薄暗くひんやりとしている職員室に続く廊下を必要以上にかつ慎重に忍び足でゆっくりと歩いている掬恵。
──こんなところで、躓きでもして部員50人分の部費を床にぶちまけるような事があったら……、大惨事。
あっ、あと、あともう少しで、……職員室に到着だ。
すると、掬恵の背後から突然こもったような咳が「ゴホンッ・ゴホンッ」と聞こえ、
その咳に背筋をぶるつかせて驚いた掬恵は部費の入っている缶を高く舞い上げ、廊下の床へ大の字になって倒れた。
当然、掬恵の周りは部費が散乱している。
また、運の悪いことに飼育小屋から飛び出て逃げてきた白いウサギが倒れている掬恵の背中の上にピョンと飛び乗り優雅にグルーミングをし始めたのである。