嗚呼!悲しき人生
第2章 参観日KY
小学校1年生の最初の授業は音楽だった。
後ろには我が子の晴れ晴れしい姿に微笑みを浮かべる保護者達が並び、先生もそれにあわせるように笑みを浮かべていた。
ちなみに私はその時、一番左のまえから3番目に座っていた。
そして担任の先生が「皆さんカエルの歌を大きな声で元気よく歌いましょうね!」
と、呼び掛け始めた。すると子供達は答えるように、「はぁい!」とか「ワカッタァ!!」
と返事をしていた。
私は内心、冗談じゃないぞと思った。
当時私は俗にいう「上がり症」とかいうやつで、人前で何かするのが苦手だった。
ましてや、カエルの歌を歌うなどあり得ない選択だった。そんな私はよりによって最悪の決断をしてしまったのだ。
立って歌わなかったのだ。
先生も保護者も異変に気が付き、ざわめいていた。なかでも一番慌てていたのは先生だった。
「ほら!どうしたの!?なんで歌わないかの!?ほら!楽しいよ!? ねっ!」
ここまでならよかったのだが、微動だにせず、ただ大理石の石像のように座り続けている私に苛立ちが頂点に達したのか、
「ホラッ! こうやって、ね!?こう、こうやって…ぐわっぐわっぐわっぐわって、ね!?」
と、自身の口元を両手でカパカパ(?)するジェスチャーをしきりにやってきた。
しかしそんなことされても、余計に動きづらい。
(パカッ)(パカッ)(パカッ)(パカッ)(パカッ)
息切れしながらも続けるその時の先生の姿を思い浮かべるたびに私は教師としての熱い思いに感動し、涙を流すのである。



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