少しずつ、見えるミライ
きっと辛かったんだろう。

我慢に我慢を重ねて、爆発しそうになってたんだよね。

今にも泣きそうな顔を見ていると、私まで切なくなって来る。



彼は、私が修ちゃんを愛していた過去を知っている。

こんなに怯えるのは、当時の様子を鮮明に憶えているからだろう。



だけど、それは過去のこと。

私の中では、とっくに終わりを迎えたことだ。



それから、さっき彼が言っていた中に、一つ気になる言葉があった。

「簡単に諦める」って、それは誰のこと?

もしかして、あっさり離婚に応じた修ちゃんが、もう一度、私とヨリを戻そうとしているとでも思ってる?



そんなこと、あり得ない。

ちょっと用事があっただけに決まってる。



万が一、そうだとしても、私の気持ちが揺らぐことはない。

だって、私には、こんなに可愛くて愛おしい子犬がいるんだから。




「ねぇ、ずっとバスルームにいたらふやけちゃうから、ベットで続きしていい?」

「え?」

「だって、今日はいっぱいしようって、冷蔵庫で約束したでしょ。」




悪戯っぽく微笑む彼には、安堵の表情が伺える。

良かった、これでもう大丈夫、と思ったけど.......

ベットでの彼は、やっぱり不安と戦っているようだった。

行き場のない苛立ちを発散するかのように、激しく求めて、夢中で私を抱いていた。



だから、辛くなった。

苦しくて、たまらなくなった。

何度も繰り返される「愛してる」が、とてもとても切ない響きに聞こえた。
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