少しずつ、見えるミライ
そんな思いで立った初日のステージは、自分でも満足の行く出来だった。

MVのおかげで俺の存在を知ったお客さんもチラホラいるようで、煽るようなパフォーマンスをしながら、花道を歩いていると、数回、名前を呼ばれたような気がした。

ってことは、ちゃんと俺ってわかって、観てくれてるお客さんがいるんだ。

何かすげー。 超嬉しい。

俄然、やる気が湧いて来る。



その日は夜になっても、理恵ちゃん、沙苗さんからの報告は特に無かった。

まずは一安心だ。



ホッとしたら、小腹がすいて来ちゃったから、ホテルの地下にあったコンビニでも覗いてみようかな。

誰かに会ったら、どっかの部屋で飲んでもいいし。



下に降りて行くと、コンビニの前でリリアさんに出くわした。

だんだん見慣れて来たけど、メイクをしていないリリアさんは、ステージに立っている時と、全然雰囲気が違う。



非公開にしている年齢も実は未帆と同じだし、すっぴんだとホンワカした可愛い感じになるから、どこか未帆を連想してしまうのもあり、俺としては勝手に親近感を憶えている。

それがリリアさんにも伝わるのか、自分で言うのもなんだけど、初めてバックに付いた時から、俺は妙に可愛がられていた気がする。

まぁ、リリアさんにも、俺と同じ年の弟がいるっていう事実があるからなんだろうけど。
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