少しずつ、見えるミライ
仕方ないってわかってるのに、切なくなって、眠る前に、未帆に電話をした。

声が聞きたくて、不安から逃れたくて、どうしても思いを伝えておきたかったから。



「ツアー初日、大成功って、テレビでやってたよ。朝陽もちょっと映ってたから、一生懸命、目で追っちゃった。」

「マジ? カッコ良かった?」

「うん、すっごいカッコ良かった。」

「惚れ直した?」

「え? じゃあ、そういうことにしておく。」

「何だよ。俺は未帆に好かれたくて、必死に頑張ってるのに。」

「何、それ?」

「だって.......愛してるから。誰よりも、未帆のこと、愛してるから。」

「ちょっと、いきなりどうしたの? 周りに誰かいない? 大丈夫?」

「いてもいいよ。今、言っておきたかったから言っただけ。」

「わかった。ありがとう。私も愛してる。」

「うん、ありがとう。じゃあ、明日もあるから、そろそろ寝るね。おやすみ。」

「おやすみ。明日、帰って来るの待ってるよ。」



未帆の声を聞いて、何だか余計に切なくなったけど、気持ちが繋がってることは確かめられたし、思いはちゃんと伝えられた。

ここから後は、俺にはどうすることもできない。

大丈夫。 信じて待とう.......




次の日、終演後に帰り支度をしていたら、沙苗さんからLINEが届いた。

目にした途端、息が止まった。

「これからダンナと食事に行くみたい」



未帆は、家で俺を待ってくれる。

笑顔で迎えてくれる。

そう信じているはずなのに、どうしてこんなに胸が苦しいんだろう.......
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