少しずつ、見えるミライ
少し前までは、踊らさせてもらえれば、それで良かった。

でも、いろいろな経験を積んで行くうち、仕事に対する欲も出て来た。



俺はやっぱり、ステージの上で踊るのが好きだ。

お客さんの笑顔が直接見られるし、グルーブ感が全然違う。

出演者とスタッフが一眼となって、みんなで作り上げる一体感もたまらない。

だから、できれば、これからもこの方向で行けたらいいな.......



なんて熱い話を、落ち着いていられないくらい高級そうなソファに座って、リリアさんと語り合った。

俺なんて比べ物になるレベルじゃないのに、私も同じことを考えてステージに立ってるってリリアさんに言ってくれたのが嬉しくて、ビール一杯だけで、一時間くらい盛り上がった。



でも、明日も明後日も公演があるから、その日はそれでお開き。

最上階から見る時別な景色を目に焼き付け、頑張って、ここに未帆を連れてこれる人になろうって、心に誓った。



次の日の夜、先輩の部屋に引きずり込まれ、かなりの大人数で飲んでいたら、理恵ちゃんからLINEが届いた。

「今日は、ダンナ来なかったよ」

その一文にホっとした。



と同時に、覚悟した。

泣いても、笑っても、明日、未帆はあいつと顔を合わすんだ.......
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