少しずつ、見えるミライ
「R'sダイニングで、店員に、水、こぼされたことありませんか?」

「水?.......あっ、ある!」

「あれ、俺です。」

「うそぉ?」

「ホントです。あの時は、本当にすいませんでした。」

「いや、いいんだけど......。」

「って言っても、記憶にないですよね? もう二年以上前のことだし、俺、厨房に入ってることの方が多かったから、あれ以降、まともに話してないんで。」

「.......。」

「あ、いいんです。困らせちゃったら、ごめんなさい。」

「.......。」



ニッコリ笑ってそう言われても、どう返したらいいかわかんないってば。

だいたい、そんな前のこと、どうして彼は憶えてる訳?

いくら水をこぼした相手でも、普通、二年も経ったら忘れちゃうでしょ。

決して常連って言うほどじゃなかったし、取り立てて目立つこともない、ただのお客さんだったんだから。



「あっ、すいません。何か、一方的にこんな話ばっかりしちゃって。」

「う、ううん。」

「詳しい話は、また今度します。開店業務、憶えなくちゃいけないのに、時間無くなっちゃいますよね。」

「あっ、そ、そうだね。じゃ、また後で聞かせてくれる?」

「はい。」
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