少しずつ、見えるミライ
「それから.....やっぱり、『店長』って、呼ばなきゃダメですか?」

「え? なんで?」

「俺の記憶の中では、ずっと『みほさん』だったから。」

「へっ?」



うわ〜、もう訳わかんない。

私、どこかで君と会ったっけ?

どうして私の名前まで知ってる訳?

必死で記憶を手繰り寄せ、脳みそをフル回転させてみるけど、何一つとして思い出せない。

あたふたするばかりの私に、微笑みながら、彼がさらに畳みかける。



「旦那さん?、いつもそう呼んでたから、憶えちゃいました。」

「嘘っ? どこで?」

「二人でR'sダイニングによく来てましたよね? 俺、ずっとそこでバイトしてた、って言うか、実は今もクロージングだけ手伝ってるんですけど。」

「そう、なの?」

「もう会えないかと思ってたんで、嬉しいです。突然、来なくなっちゃったから。」

「そ、それは.....。」



久しぶりに耳にした店名にドキっとした。

R'sダイニングは、新婚当時、ダンナ、いや元ダンナと通っていた店だ。

住んでいた所に近かったのもあるけど、本格的な料理を出すのに気取っていないカジュアルな雰囲気が好きで、何かの記念日やお祝いには、よく足を運んでいた。
< 17 / 216 >

この作品をシェア

pagetop