少しずつ、見えるミライ
家に着くと、部屋の灯りは点いていなかった。

良かった。 朝陽はまだ帰っていないようだ。



何時に着くかわからないけど、とりあえず待っていてあげよう。

そう思ってお風呂に入り、くつろいでいたら、テレビの音を子守歌に、私はうたた寝してしまったらしい。



今日は、いろんなことがあり過ぎた。

どこまでが夢なのか、わからなくなる。

でも、この温もりはホンモノかな。

あったかくて、優しくて、すごく気持ちいい.......



目覚めた時には、私を真横から抱きしめる朝陽の腕の中。

いつもと同じ感触に、安堵感でいっぱいになる。



「おかえり。」

「ただいま。」

「三日間、ご苦労様。どうだった? 」

「すげー盛り上がってて、楽しかった。でもさ.....。」

「何?」

「ライブは近場がいいな。未帆の顔、毎日、見られないとイヤだから。」



そう言って、頬にキスする朝陽が愛おしい。

修ちゃんみたいな頼もしさはまだないかもしれないけど、朝陽はいつも、柔らかな温かい愛で私を包んでくれる。

そして、誰よりも私を必要としてくれている。



「会いたかった。早くこうしたかった。」



きつく抱きしめる腕には、不安が滲み出ている。

聞きたいことがいっぱいあるのに、必死で知らないふりをして、我慢してるからだよね。



「大丈夫。私はずっと朝陽のそばにいるよ。」

「ほんと?」



頷くと、どちらともなく唇が重なり、次第にお互いを確かめ合うような深いキスになって行った。

それは、まるで「離れない」って言ってるみたいな、少し切ないキスだった。



だから、多分、今のところは、それが答え。

修ちゃんの言葉は心に響いたけど、私にはまだ朝陽を手放す勇気はない.......
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