少しずつ、見えるミライ
「あ、でも、一緒に暮らすなら、その言い方やめない?」

「って、敬語?」

「そう。」

「あ、じゃあ、未帆さんも、仕事以外で『瀬戸君』は禁止。」

「じゃ、『朝陽君』?」

「『君』はない方がいいけど、ま、最初はそれでもいいかな。」

「じゃあ、そうするね。」

「うん。そう呼んで。」



未帆さんに気付かれないよう、そ~っと自分の手の甲をツネってみる。

痛いってことは、夢じゃないんだ.......

あぁ、めっちゃ嬉しい。

勝手に顔がニヤけてしまう。



「だけど、みんなにはまだ内緒だよ。」

「わかってる。あ、それから、念のため、約束しておくね。一緒に住んでるからって、何でもアリじゃ困っちゃうでしょ?」

「え? 何を?」

「あ、だから、その.....例えば、急に襲ったりとか、そういうことは絶対しない。」

「ふっ.....うふふふ。」

「笑わないでよ。何とか踏み止まれるように、敢えて宣言してるんだから。」

「はい。」

「未帆さんに『好き』って言ってもらうまでは我慢する。ちゃんと恋人になるまでは。」

「うん、わかった。ありがとう、大切にしてくれて。」



未帆さんは笑ってたけど、これは多分、自分の理性を保つためにも、男として宣言しておくべきことだ。

そうしたかったら好きになってもらうしかないっていう、超強力な原動力にもなるだろうし。
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