むとうさん
今日はミーティングがあるからスーツで行こう。

日々の仕事が私を思考の渦から引っ張り出す。

こんなことを人に話したら「終わってよかったね」とか「そんな適当な男のこと忘れるべきだ」とかいう結論になるんだろう。

私はいつからか恋愛のことで悩むことはくだらないことだという価値観が植え込まれた。

入れ込んじゃだめだ、楽しんだもの勝ちだ。だめだったら切り替えて次いこう。

私は感情をうまく出せなくなった。物分かりのいい女でいつづけた。

すぐ泣いたり、怒ったり笑ったりする女は美しく見えなかった。でもそういう女性に私は嫉妬している。

多分、達也の好きな女の子はそんな感じなのかもしれない。奥さんもそうなのかもしれない。

私は、そうじゃないから奥さんになれなかったのかもしれない。
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