むとうさん
家の中は相変わらず大きな壺が飾ってあったりした。

「慶子さん、久しぶりだね」
おじさんはにっこり笑った。高そうなシャツにボタンを外したベストを着たおじさんは昔のままの上品さに渋みが加わって相変わらず格好がいい。

小さい頃から、おじさんは私のことを慶子さんと呼ぶ。

おじさんと父は早速ゴルフの話とか、お酒の話で盛り上がり始めた。二人はあまりにも似ていないのに、とても仲がいい。

お風呂に入って、少し落ち着かない居間でぼーっとしていると、父が缶ビールを持ってきてくれた。

「何も変わっちゃいないだろ。」
「そうだね。二人とも元気そうでよかった。相変わらず、きちっとした格好だよねおじさんたちは。こんなリラックスしてて申し訳ないよ。」
「昨日の晩、電話した時、慶子もいくって言ったら喜んでたぞ。」

プシュッとアサヒの銀色の缶を開けて、ゴクゴクと飲み干す。

実は高校になってからは時々1人でこの家にきたこともある。

大抵おじさんはいなくて、おばさんがいつも近所にある高いケーキ屋さんのケーキを用意してくれて、色んな悩みを聞いてもらったりしていた。
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