最も危険な  ルームシェア
彼女の対応は変に力んでなく上品だ。

柔らかなトーンでクリーミーな声が俺の耳に心地よく響いた。

「今週はいつもより多いが間に合わないようなら連絡をしてください。」

「はい。必ずご連絡いたします。」

「木村さんからは何かありますか?」

「いえ、特にありませんが、あの…」

彼女は口をにごした。

「何か?」

「私は木村から仁科に変わりました。」

俺は愕然とした。

彼女の左手の薬指に瞬間で目を向けた。

何もなかった。

マリッジリングはない。

怪訝に思った。

「旧姓です。」

「はっ?」

俺はこの衝撃に頭が回転せず

動揺を隠しきれなかった。

「あの、とにかく仁科ですので。」

「旧姓って?」

「離婚したので戻ったのです。」

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