even if
『ねぇ?渋谷くん』

心臓の音に耳を傾けながら、私は勇気を出して聞いてみる。
ずっと心にしまってた疑問。
ずっと怖くて聞けなかった。
だけど今なら怖くない。

『なに?』

『もし…もし私が18歳だったら、どうしてた?それでも、私を好きになってくれた?』

『18歳だったら?』

『うん。私が先生じゃなくて、同じ生徒だったら…って。想像してみて』



『…そうだなぁ。想像するのが難しいけど…』



そう言うと、渋谷くんは黙りこんだ。
きっと今、想像してる。
私が先生じゃなくて、同じ18歳だったら、って。

同じ18歳だったら、好きになってなかった?
私が先生だから、イケないことしてるから、こんな気持ちになるのかな、なんて…思ったり…しない?




『想像してみたんだけど…』


渋谷くんの声が、頭の方から聞こえて、私は目を閉じて祈る。
お願い。

『ななちゃんが18歳だったとしても、俺は絶対にななちゃんを好きになってた』

私が欲しかった言葉。
閉じたままの目から涙がこぼれた。


『ななちゃんが生徒でも先生でも、ななちゃんなんだって。てか、俺は悪いけど、ななちゃんを先生だなんて思ったこと、一回もないからな。先生とか生徒とか関係ない。これは普通の恋愛なんだよ。何が違うの?ななちゃんは俺の好きな人。ただ、それだけのことだよ?』


渋谷くんは、私の顔をのぞきこむと、私の頬をそっと指で撫でた。


『ななちゃん、何で泣いてるの?』

『わかんない』

嬉しくてかな。
安心したからかな。
渋谷くんが、大好きだからかな。

『わかんないなら、しょうがないな』

渋谷くんは、少し笑うと、優しくキスをくれた。


『泣いてる顔もかわいいな』

そう言って、頬にもキスをする。


『これからのななちゃんは俺が全部もらうから』

私は頷く。
これからの私、全部渋谷くんにあげる。

『泣いてる顔もかわいいけど、やっぱり泣かせたくない。俺がいるから。俺が守るから。だから、ずっと一緒にいよう』

『…分かった』


私は顔を上げた。
渋谷くんとキスがしたくて。

渋谷くんは、目を細めて私を見ると、そっと唇を重ねた。




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