even if
足の力が入らない。
腰がふにゃんとして、渋谷くんに抱かれていないと立てなかった。


あれ…。
私お酒でも飲んだっけ…。


ふにゃふにゃのこんにゃくにでもなったみたい。


とろん、とした目で渋谷くんを見ると、

『ちょ…ななちゃん、そんな目で見ないでよ。これ以上してたら、理性がやばい。これでも俺、本当我慢の限界なんだから』


渋谷くんが赤い顔をしてそう言った。


私は無視して、渋谷くんの首に腕を回すと、唇をふさぐ。


理性?
渋谷くんの理性なんか、どっかへ飛んでいっちゃえばいい。

『…ちょ、ちょっと、ななちゃん、待っててば。ちょっと…俺まじでヤバい。もう無理』

『わかった。じゃ帰ろう』


私はあっさり引き下がる。
なんでも引き際が肝心なのだ。


気合いを入れて、足に力を入れると、自分のバッグを持ち、渋谷くんの荷物を拾って、渡した。


『…うん。帰ろう』

渋谷くんは、急にシャキッとした私を見て少しくすくすと笑った。


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