even if

green peas

放課後、遠藤くんや濱田くんたち、ラグビー部の生徒たちが四人遊びに来た。

部活は引退したばかりで、頭がまだ受験に切り替えれないのだろう。

『ななちゃん先生ってさぁ、なんで白衣着ないの?普通、着てるでしょ』

『白衣着てると、なんだか先生って感じがするでしょ?そういうのが嫌だから。それに、笑っちゃうほど似合わないから』

『でもさぁ、白衣着てる方がいいんじゃないの?』

『どうして?山崎先生は着てた?』

去年、定年退職された、前の養護教諭の名前を口にすると、遠藤くんたちは一斉に笑った。

『山崎先生も着てなかったけど、山崎先生は別にいいんだよー』

『どうして?』

『山崎先生はおばあちゃん先生だから着なくていいけど、ななちゃん先生は着てよー』

『なにそれ。意味がわからない』

『だってさぁ、白衣ってなんかエロいじゃん』

『白衣、エロい』

『保健医、エロい』

口々に『エロい』を連発する男子生徒に、あきれて、言葉も出ない。

『あのねぇ。私保健医じゃないの。養護教諭!』

『同じじゃん』

『保健医と養護教諭は全然違うよ…』

抗議の声は『白衣はエロい』と盛り上がる男子生徒たちにかき消されてしまう。

あわあわとしていると、遠藤くんが、

『でもさぁ。始業式でななちゃん先生見たとき、俺まじびっくりしたよ』

と言い出した。

『え?どうして?』

『だって、ななちゃん先生、新入生みたいだったよ』

あー、俺も思ったー。
他の生徒たちが同意する。

『背もちっちゃいしさ、髪も真っ黒だし、年上とは思えない。それに何て言ってもかわいいし』

そ、そうかな。
えへへ、と照れ笑いした私を、みんながニコニコと見ている。

『もしセクハラとかされたり、エロいこと言うやつがいたら、俺らに言うんだよ?』

え…それって君たちのことでは?
思ったけど、ただ笑って、

『うん、ありがとう』

そう言うと、遠藤くんたちはふざけあいながら出ていった。
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