恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜

思い出したくない。

お前と話すと嫌な記憶が蘇る。

振り払おうと話を元へ戻す。


「で、奈々ちゃんは拓海の部屋の鍵を持

っていたんだよね」

鍵を渡すなんて、本気だということか‼︎


「拓海が女を部屋に入れるなんてなかっ

た。奈々ちゃんは拓海の特別ってことだ

な」


特別⁈

俺にはわからない感情。

早希の表情が暗い。


「今日の早希は、口数が少ないね」

なにかあったのか?


「今日は、もう帰ろう」

会計を済ませ店を出る。


「それじゃ、またね」

店を出るなり、別れを言う早希。


なんだその顔は⁇

俺の目を見ようともせずに背を向け帰っ

ていく。


無意識に追いかけていた。


「私、帰るんだけど……」

「もう少し一緒にいたい」

このまま別れたらもう会えない気がする。


すると、早希が俺を抱きしめる。


驚き、フリーズする俺の頬を手で包み触

れるだけのキスをする早希。


すぐに離れていく早希の唇を追いかけ、

逃がさないように頭部を固定し貪るよう

に唇を塞いでいた。


触れてしまった温もりをもっと堪能した

くて路地裏に連れ込み早希を壁に押し付

け舌を絡ませ、キスに夢中になっていた




早希は俺の胸に顔を埋め呼吸を整える。


そんな仕草が愛しくてそっと抱きしめる

と、この温もりが欲しいと思った。


「好き…雅樹が好きなの…」

突然の早希からの告白。


「………………ごめん」

先ほどとは違い冷静な俺がいた。


こんな俺が好きだと言ってもらえる資格

があるのか?


俺なんかが早希に触れていい訳がない。

そう思うと謝っていた。


背を向け去って行く早希を見つめるだけ

で追いかけることができなかった。


眠れずに長い夜を過ごした。

早希の切ない表情が忘れられない。

どんな気持ちで言ってくれたのか?

早希にもう会えないのだろうか?


俺以外の男に笑顔を見せ、泣いたり、拗

ねたりする早希を想像すると胸がえぐら

れるように痛いのはなぜなんだ。


これが、好きだということなのか⁈


ただ、側にいてほしいと思うだけじゃダ

メなのか?


大事にしたいと思った存在なのに、あん

な悲しい顔をさせたくなかった。


俺は、これからどうすればいい⁇


早希は会ってくれるだろうか?
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