近距離ロマンス
由宇ちゃんに引かれる中、人ごみの中で後ろの松本を振り返った。
『あとで、昂汰んとこで合流な』
松本が口パクであたしに伝えた。
あたしはコクコクと頷いて、返事した。
その間、あたしは何度人にぶつかっただろう。
由宇ちゃんはどのくらいあたしを引く力を強めただろう。
二人きりの世界に入りたくて、あたしは必死に松本の視線を絡めた。
それはほんのわずかだけど、理想の世界は完成したんだ。
人ごみが薄くなって、由宇ちゃんは力を緩めた。
あたしも由宇ちゃんに歩調を合わせる。