【完】復讐の元姫
お嬢様が、電話のため少しだけ席を外していた。
そのとき、わずか数分。
でも、彼は確かに俺に言った。
「調子、どうですか」
「……別に、さっきも言ったが平気だ」
「……それなら良かったです。
お嬢様も、心配されていましたし」
ふ、と。
“お嬢様”という言葉だけで、彼の瞳に甘さが浮かぶ。
……相当、好きなのか。
「汐乃、婚約どうする気でいるって」
「……一応、近いうちに受けられるそうですが」
この時、俺は嘘をついた。
とっくにお嬢様は、“受ける”という返事をしている。
一時期、危ないからという理由で、お嬢様が倉庫に長く滞在される前。
婚約を受けるという条件で、俺はそれを許したから。
……卑怯かもしれないけど、仕方ない。