しろっぷ
「それでメニューは何にする?」
「え、じゃあレモンティーにします」
 と、司はいきなり人差し指でゆかりの唇に触れ、イタズラ顔を見せた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ゆかりの中では確実に時間が止まり、その時間がもう動かなくてもよいくらいに思っていた。

「敬語禁止」
「ごめんな・・・じゃなくってゴメン」
「何てね。姉ちゃ・・・姉貴がこんな少女漫画ばかり見ていたからマネをね」

 お姉さん、司君をこんなに立派に育ててくれてありがとうございます。
 私、今幸せです!!

 会ったこともない司の姉に感謝しつつ、このままだと身が持たないと思ったのか自我を保つため、司にわからないよう深呼吸を始めた。
 そうとも知らず司はクラシックの音を害さぬよう、オーナーに向かって何も言わず手を挙げて呼んだ。
 だが、オーナーは何かの棒を指揮棒に見立て、音に合わせて指揮を開始。
< 41 / 306 >

この作品をシェア

pagetop