歩道橋で会おうね。
「あの人は?」
「ハルキの母親です。
わたしにとっては、義理の母親です」
「そうなんですか…」
またしても人一倍涙もろいアユは、目に涙をため始めた。
色々な想像でもしたのだろうか?
「さ、入りましょう」
アユも俺も、銀の複雑な家庭環境を知りたかったが、羽菜さんはそれ以上語ることがなかった。
今も聞いていない。
病室の中、銀は眠っていた。
まるで死人のようだ。
…失礼だ、撤回しよう。
「そういえば。
ハルキね、丁度良い機会だから、名字を変えることにするわ」
「そうなんですか?」
「そうよ歩生くん。
言おうと家で待っていたら、ハルキが運ばれたことを聞いたの。
だから、ハルキはこれからわたしと同じ名字、水川になるわ」
「何で今まで、名字変えなかったんですか?」
「…そこ、気になるわよねアユちゃん。
良いわ、教えるわ。
銀と言う名字は、ハルキがとても気に入っていたの。
今まで何度も変えようと言ったんだけどね。
ハルキは聞く耳を持たず、最近わたしとも喧嘩ばかり。
でもこれ以上名字を銀には出来ないから、言おうとしたの。
良い加減銀という名字を捨てなさいって。
わたしは詳しく知らないの。
何故ハルキと母さんがあんなに仲悪いのか。
ハルキ自身も詳しく語ろうとしなくてね。
会えば必ず衝突して喧嘩する母親と同じ名字ですもの。
母親はもう名字は水川に変えたのに。
何でハルキは変えようとしないのかしら?」