歩道橋で会おうね。






オムライス弁当を食べ始めるアユに、私は隣でホワイトボードに書いて行く。



〈アユ吾妻くんは知り合いなの?〉

「なわけないじゃない。
知り合いだったら、最初から初対面な態度取らないわよ」



だよね。

なら2人は初対面。

…それなのに。

何故吾妻くんは知っていたんだろう?



「…ただ」


アユがぼそっと呟く。



〈ただ?〉

「あの目…どこかで見たことある気がする」



あの冷たい目が?



〈ハルキくんの間違いじゃなくて?〉

「ううん。
ずっと前…どこかで。
ただ、あんな冷たい目じゃなくて、もっとあったかい目」

〈あったかい目?〉

「うん…。
ただどこで見たのか思いだせない。
吾妻って名字も、知らないし…。
ただの勘違いかもしれない」



中学じゃなければ、私も知っているはず。

でも、吾妻なんて人…いたかな?

小学校時代思いだせる名字は、シロガネとオノだけだもの。

…嫌な名前だけ覚えているなぁ。







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