鳥籠の底は朱い道
「今度こそ、完全に殺して楽にしてあげる」
椿は黒馬の言葉を無視して態勢を低くする。
「やめろ椿! 俺の言っていることが聞けないのか――」
届かない。いや遅い。すでに椿の体は朱道の体を貫いている。そして一撃ではなく、どれも即死の一撃を速攻で繰り出す。
朱道は自分が何をされたかすら分からないまま意識を失っただろう……いや死んだだろう。
確かに朱道の回復能力は高いというよりも神がかっている、だが、今回の受けたダメージは回復の追いつかない絶対的な死だろう。
今度は全身に血を浴びることはない。全身より放出される神素が全ての血を弾き飛ばしているから。
「もう、起き上らない。これで終わり」
言い切る椿だが、それは願望。もう起き上らないでほしいという願い。
死んだ相手に、殺した相手に言う言葉ではないが、それは予感がしてしまうから。まだ朱道が起き上がろうとするのではないかという残像が見えてしまう。
「……ぁ」
いくつもの臓器を破壊され、体のほとんどを穴だらけでされたにも関わらず、朱道は即死しなかった。

一瞬に動く指。
そして椿を見上げ、睨みつける黒の双眼。

それはどんな殺気よりも恐ろしいだろう。
「――い、や」
掠れる椿の悲鳴。
だが、もがきながらも朱道は起き上がろうとするが、とうとう力尽きた。
「――椿……椿、貴様なんで止めなかった!」
「こうなってしまったら殺す他ない。こんな姿があの守護四神の朱雀であるはずがない! 化け物みたい。守護四神というよりも守護四霊の方が似合っている」
「強ければそれでいい! 俺が求めるのは殺戮とそれを為す絶対的な力だ。だから異端だろうが朱雀の力を手に入れたんだ」
< 36 / 69 >

この作品をシェア

pagetop