鳥籠の底は朱い道
――朱道も椿の体を抱きしめ、そして最後に能力を発動せる。
「その魂、オレによこせ。お前の分も生き続けてやる」
そうして朱雀として異端に受け継がれた能力であり、一度奪われた体を取り戻した能力、朱色の反捲(しゅいろのはんまき)を発動させる。
前朱雀はあらゆる全てを武器に飲み込む最強の能力を持っていた。異端ならがらも朱道はその能力を受け継いだが、飲み込めるのは死という魂であり血でもある。そして飲み込んだ魂により自分を更に強化し、永遠に飲み込んだ相手の能力を使える。
つまり今の朱道は一段と強化され、そして椿の能力も得た。
その椿の体は浄化されるかのように重みを失くし、そして最後には元々なかったかのように消えてしまった。そうなるとブラッティフィールドは解除され、何も見えることなく、事態を全く掴めていない黒馬が慌てて現れる。

――その後、朱道は気だるさから黒馬が何を言っているのはまるで耳には入らなかった。
ただありのままを……力に目覚め、その力を使って椿を――母を殺したことを話す。
黒馬が認める通り、やはり椿は正真正銘、朱道の母であった。
今日、朱道は朱雀としての力に目覚め、初めて神素を用いた戦いをして、そして初めてその力で人を殺した。
その殺した相手は椿であり、初めて敗北した相手でもあり、そして母でもあった。
だが朱道は後悔しない。椿は自分が母であることを承知で向かってきたし、息子の未来を考え本気で殺しに来たから。
――それよりも謎なのが朱道の中にいたあの声。椿は最後の最後に答えを言い当てた。それが霊素を用いて朱雀の対となる存在……そんなもの守護四霊の“鳳凰”以外ありえない。だからつまり、朱道には鳳凰と朱雀という相反する対色を持っているということ。
どうして鳳凰の力があるのかは分からない。ただ分かるとするなら、それは当の本にである鳳凰とそして前朱雀だけだろう……。
そして朱道もこの霊素が鳳凰であることを知る由はない。いや知るつもりがない。ようは使えればいいのだから……。
< 46 / 69 >

この作品をシェア

pagetop