鳥籠の底は朱い道
植え付けられた説明書
朱道は目覚めた神素と霊素の使い方を知っていた。
それは覚えたや教えてもらったという感覚ではない。記憶のページに無理矢理挿入されたような感覚であり、つまり力の使い方を自然と知ったということ。
もう知った段階で朱道は神素と霊素の全てを受け入れている。気に入らなければすでに棄てていただろう。
だが確実に自分を強くするなら、それにどんな代償があろうが棄てたりしない。
朱道が手に入れた能力は全部で四つ。
のちに神素は一つ、霊素で二つ……残る一つはなんと前代未聞の神素と霊素の合成体。
しかし言うまでもないが神素と霊素は相反する力であり別物である。言わば生と死。
それが協力して一つの力となるならば、それは世界の常識を翻した力だろう。
ただしそんな未知なる力にはいくつかの条件があった。それはたった一回の使用しか出来ないということと、その力は朱道には存在しない“善の優しさ”と朱道の根本である“悪の残酷さ”が必要。しかし朱道にとって残酷さは悪ではなく善である。
つまり力を知りながらでも朱道は、その発動条件を満たすことは出来ない。だからこの四つ目の力を説明する必要性はない。故に永遠の謎となるだろう。
変わりに残った三つの能力を説明しよう。
神素を使った能力。
それは自分の内なる力と椿の魂を吸収した朱雀の能力。

朱色の反捲(しゅいろのはんまき)

これは完全な朱雀としての能力ではなく、本来の朱雀が持つ能力“朱色の渦”が正式。異端に朱雀を継いだおかげで朱道はこの能力を使えなかったのだが、力の目覚めと同時に朱道に合わせるかのように変化したのが正に“朱色の反捲”である。
本来の朱色の渦ならば飲み込めるものはあらゆる全ての物であり、その飲み込める要領は朱雀槍アルテミスの限界値であり、自分の命の価値と言われている。
だが朱色の反捲が飲み込めるのは生き物の血でありそれに特化する魂。つまりは霊素というもの。
しかも魂を飲み込むと相手の力を奪い、自分の能力へと変換する。場合によっては相手の能力も使える。
容量は武器ではなく自分の器。人の魂を奪うことに罪悪を感じ魂を拒否した時のみである。故に朱道はこの段階では無限の強さ……いや生き物の数だけ強くなれる。
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