鳥籠の底は朱い道
クロとアカ
「クロ、いるか」
どことない森の中、いまだに森は静かだが朱道の声は響いている。
そんな響き渡る声に従うようにゆっくりと現れたのは黒猫。
朱道はこの黒猫に名前をつけた。
ただ単純に呼びやすいような名前として『クロ』となんの捻りもない名前にしたのだがそれでも黒猫は嫌がる様子もない。
この日、実はすでにクロと出会ってから三日が過ぎている。
朱道の手には紙パックの牛乳と一枚の皿を持っている。
クロが現れたことを確認すると、朱道はその皿を地面に置き牛乳を入れる。クロもそれを当り前のように近寄り牛乳を飲み始める。
「お前ってこんな森の中でどうやって生きてんだ? 食いもんなんてロクにないだろ?」
朱道は質問を投げかけるがいつもと変わらずクロを無視して牛乳を飲んでいる。
「お前はいつもオレの質問には無視だな」
「……」
朱道とてクロが話せらる訳がないことなど承知のこと。しかしここでいう朱道の無視とは言葉ではなく態度や興味。そうクロは朱道の問いに一切の興味を見出していない。
それを朱道は嫌だと不快だとは思わない。
それがこいつらしいと思うほどであるのだから。
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