鳥籠の底は朱い道
帰るともちろん黒馬は不機嫌そうに何をしていたか問いただす。
――だが朱道は何も答えず今日の戦いは中止になった。
戦うことを好んでいたはずの朱道だが、別に戦いがなくてもいいと思えたのはこの時が初めてだろう。
そして真夜中、真っ暗に染まる森の中で朱道は考える。

オレはどうしたいんだろう?

この先の未来を朱道は考える。もちろんこのままだと黒馬の望むような殺戮マシーンになるのは承知のことで、嫌ではない。
――けど多分クロは違う。絶対にそんなことは望まないだろう。生きるために最低限の殺ししかしない。
しかし、どうしてそんなクロを朱道は自分と同じだと思ってしまったのか。本来は全くの別な生き方をしているのに。
「別な生き方?」
疑問だった。
別な生き方とはなんだ。オレは生きるために殺しを続けている。そしてクロも間違いなく生きるために殺しをしてきた。
なら何が違う?
――いやいや全然違うだろう。オレの殺しとクロの殺しは全く違う。意味が全然違う。
本当にオレは生きるために殺しをしてきたのか。あの殺しに生きる意味はあるのだろうか。
確かに殺し合いこそオレの生きていることを実感できる手段。そしてオレは殺すごとに強くなっていく。

だけどそれだけだ。
オレにあるのはそれだけだ。
なんで強くなりたいのか分からない。
この強さでどうしたのか分からない。
オレにはオレの未来が見えていない。

やっぱりクロの生きる理由が知りたい。
あいつこそオレと同じであるのだから生きる理由を知りたい。

オレは未来を見たい!
 
それがオレの今の願望。そうなれば生きる形が変わるかもしれない。だけどそんなものは関係ない。だってオレはまだ自分の生き方すら決まっていないんだからな……
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