鳥籠の底は朱い道
鳥籠が啼く
次の日から朱道は変わった。
まず一番の変化が黒馬に言った一言。

「今日オレは戦わない」

理由は言わずにただそれだけを言う。
黒馬も突然のことで驚くのだが、怒りを露にして朱道の胸倉を掴む。
「何を言ってるのか分かってるのか! 戦わない? それでどうする。戦わなくして強くでもなれるのか」
「オレは強くなってどうする? 意味はあるのか。オレには分からない」
「意味がない訳ないだろ。その力は俺のためにあってこの世界を変えるためにある。いいからお前は黙って俺に従え!」
やっぱり分からない。自分の未来すら見えないこの力に世界を変える力があるのだろうか。

「オレは戦わない」

そんな一言に黒馬は本気で怒り、朱道を殴り飛ばす。
思った以上に衝撃がなかったのは瞬時に神素を纏って防御したからだろう。
こうまで派手に殴られ敵視に近い感覚を得ているのに朱道は反撃出来ない。まるで縛られているように体が言うことを聞かない。
「聞け朱道。お前は俺のために生きている。俺がいないと生きていけない。だから俺の思うように生きないといけない。お前はものを殺すための俺の一部なんだ。だからどんな生き物でも殺せるお前でも俺を殺すことは出来ない。俺こそがお前の生きる理由だからな」
オレが親父の一部?
ならオレと親父が同じ?
どこが同じなのか分からない。けど確かにオレは親父を殺すことを拒否している。それでもオレは戦わない。
倒れ込んだ状態から朱道は起き上がり、一瞬黒馬を睨み出て行く。
「少し外で頭を冷やすといいだろう。それでもちゃんと来いよ」
「……」
そうして朱道は何も言わずに出て行く。
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